君の隣で

うーん…。

何かを渡すことは決まったのだけど…。

何を渡そうか決めてなかったーー…。

どうしよう、どんなのあげればいいんだろう…。

男の子に物をあげるのは初めて。

私は数学の授業の中、スマホを教科書の後ろに隠してプレゼントを調べる。

チラッと隣を見ると、陽斗くんは机に突っ伏して寝ていた。

ホントは寝顔を見たい…けど。

あとで陽斗くんの笑顔を見るためだ、ここは諦める。

と、そんな時、ある記事を見つけた。

『男の子にあげるならお守りが一番!何かの試合が近い時とかにあげると絶対喜ぶはず!!』

あ、そういえば陽斗くん、今度サッカーの試合があるって言ってたな。

いつだっけ…。

えっと、確か……

『次の土曜日だよ』

陽斗くんの声が脳内再生される。

次の土曜日って、ことはー、えっとー今日が金曜日だからー……

…あれ?

土曜日って、金曜日の次だよね?

月火水木金土日だもんね。

次の土曜日って言ってたのは多分月曜日だから……

あれっ、まさか明日?

私はあわてて壁に掲示されているカレンダーを見る。

うん、明日だね。

…ヤバい。明日って。

今日中に作らなきゃいけないんだよね?そうだよね?

ヤバい。

私は急いで裁縫セットを取り出す。

こうなったら、昼休みにさっさとご飯食べて作るしかないよね。

そうしたらギリギリ間に合いそう。

よし。

頑張るぞ、おー!

私は右手の拳を高く振り上げる。

「すごくやる気があるねぇ、桐谷さん。やる気があるのはすごくいいことですねぇ」

ん?なんか上から皮肉っぽい声が聞こえたのは気のせい?

私はゆっくり上を見上げる。

その後私の視界に入ってきたのは、

こわーーい笑顔でニコニコ笑っている先生ってことはスルーしておきましょうね。