君の隣で

私が恋をしたのは満開の桜の下だった。

「ねぇ、私好きな人できたよー!」

私の親友、大沢綾乃が言った。


綾乃はぱっちり二重に髪をツインテールにしている可愛らしい女の子。

小学生の時からいつも一緒だ。

「へぇ。おめでと。誰?」

私は恋をしたことがないし、そういうのは興味ないから、素っ気ない返事をした。

「えっとねぇ…あっ!来た!」

綾乃が私の後ろを指差した。

私がゆっくり指差された方を見ると…

そこには、

サラサラの髪、澄んだ瞳、キリッとした顔に完璧なスタイルの男の子がいた。

男の子を見た瞬間、サァッと風が吹いた気がした。

私の髪がパサパサと肩をたたく。

「え……….、」

そっと胸に手を当ててみると、いつもより鼓動が速い気がした。

「めっちゃカッコよくない!?私一目惚れしちゃってさぁー」

もう、綾乃の話なんて頭に入ってこなかった。

目の前の男の子をぼーっと見つめる。

すると、

「バチッ」

「っ!?」

目が合っちゃった。

気がついたら急いで目を逸らしていた。

なんで逸らしてしまったんだろう?

そういえば、なんだか頬が熱い気がする。

「桃音ー?」

自分の名前を呼ばれて、ハッとした。

気づくと、もう男の子はいなかった。

「大丈夫?ぼーっとしてたみたいだけどさ」

「あ、う、うん」

「そっか、ならいーや!てことだから、私の恋応援してくれない?」

「あ、綾乃の恋?」

「そうそう!あんな人と付き合えたらサイコーだしさっ!」

私は、あ…、と思った。

そうだ、綾乃はあの男の子が好きなんだ。

なぜか応援したくなくなった。

どうしよう、なんて言えばいいのだろう。

「ねっ、応援してくれるでしょ?
桃音好きな人いないでしょ?」

「…えっとぉー…」

私は真っ直ぐ綾乃を見ることができなかった。

必死に何を言おうか考えていた時、

「キーンコーンカーンコーン」

タイミング良くチャイムがなった。

時間の神様は私の味方をしてくれたみたい!

「と、とりあえず教室戻ろっかぁー、、、」

私は逃げるようにして校舎の方へ歩く。

「ま、待ってー!」

私は綾乃を待つことなく、教室に向かった。