無我夢中で走り、気づけば見慣れない街並みが広がっていた。
まずい。
でもひたすら真っ直ぐ走っていたのだから引き返せば大丈夫なはず。
踵を返そうと足を上げた瞬間、視線が交わった。
「はじめ…くん……」
行き交う人々の動きが遅く見えた。
そして一君が一歩踏み出した瞬間、私は弾かれたように走り出した。
今一君と顔を合わせたら全てを話して助けてって言いたくなってしまうに違いない。
最後に引っ叩いてしまった手前、そんなおこがましい事できないし総司が労咳でしたなんて言えない。
なのに、何で追いかけて来るの?!


