中仙道を抜け、私が板橋の刑場に辿り着いたのは翌日の朝だった。
近藤勇の首が斬り落とされる姿を一目見ようと既に見物客の集団が出来ている。
汗や砂、足は血に塗れた私の姿はさぞ酷かったのだろう。
人集りに入ろうとすると見物客達が顔をしかめながら私を避けた。
お陰で一番前まで行くことが出来た。
柵の隙間から見える刑場を見ると縄につながれた勇さんが新政府軍に連れられてやってきた。
お国のために、お上のために戦ってきたと言うのに。
「罪人として扱うなんて…」
許せない。
勇さんは抵抗することもなく奴等にしたがい、静かに膝を地につけた。
彼の正面には刀を持った男がいる。
嫌だ、やめて。
柵を両手で握りしめ身を乗り出した時、勇さんと目があった。
彼は一瞬だけ目を見開くと新政府の連中にこそっと耳打ちをし、再び元の位置に戻った。


