玄関先まで来ると私達は貼り付けていた笑みを消した。
「雪、もう知ってるんだろう」
左之さんが声を固くして聞いて来たのに重い首を縦に振った。
「勇さんが…捕縛された事でしょう」
声に出すと事態の深刻さが浮き彫りになり涙が浮かぶ。
その報せが入ったのはほんの数日前のことだった。
植木屋の御主人が教えてくれた。
「近藤さんは今大久保大和を名乗っている。きっと土方さんに言われたのだろう、どんなに尋問されても決して素性を明かさなかったらしい。だが…」
勇さんを尋問している連中の中に御陵衛士の残党が紛れ込んでいたのだ。
このまま行けば彼は処刑を免れない。
堪えきれず零れた涙を隠すように顔を覆った。
「悪いな、こんなはずじゃなかったんだ。あの人と喧嘩別れしちまったが戦が終わって時が経てばまた酒を酌み交わすつもりだったんだ…っ……」
泣いているのだろうか新八さんの声が震えている。


