「お姉さん、すごく急いではるみたいやけどどへんしたの?」
「はっ、そうだった!!ごめん千代またこん……」
千代に別れを告げながら逃げの体制に入った時、ポンッと言う音と共に肩に何かが乗った感触がした。
捕まった。
「お兄さん、前にお姉さんと一緒にいたお人どすな」
事情を知らない千代がにっこりと可愛らしい笑顔を浮かべながら言う。
すると一君は千代と同じ目線にしゃがみ込むともう片方の手で千代の頭を優しく撫でた。
「こいつがぶつかって悪かったな」
「うちはどもへんよ。はっ!早う家に戻らなあかんかったんや!ほな またな、お姉さん、お兄さん!!」
慌てて駆け出して行った千代を見送ると肩に乗った手を振り払って私も何事もなかったかのように立ち上がり、歩みを進める。


