痛い。

起き上がりたくない。

ハズカシイ…

さっきの大学生、思いっきり見てたよね…。

えーと…
顔は打ってない。
受け身は…不本意だけど得意だし…。
古武道のせいで…!

階に倒れ込んだまま、心の中でブツブツ。

「もうし…」

もーし?
掛けられた声は…さっきの大学生だよね?
放っておいて…!

「死んでるんちゃうやろか…?」

こどもの声まで。

人だかり…!?

「大丈夫ですか?
 聞こえてますか?
 触りますよ?」

「生きてますっ!!」

慌てて起き上がって、背後を振り返った。




固まる。



…って、本当になることあるんだ?

目は見えてる。

でも思考が追いつかないから、反応出来ないって言う。


「どこも痛めていませんか?」

困ったような顔をした目の前の人。
どこかで見たことあるんだよ、そのヘアスタイル。
頭のてっぺんだけハゲ。

サカヤキ…。

「……サカヤキだ」
「えっ。月代がどうしました?変ですか?おかしいな、毎日剃っているのですが」
「沖田はん、この浪人はん、変やで。壬生浪士隊に入れんほうがええで?」

ミブロウシタイ?

そう言えば、沖田はん…って…。

「……沖田総司?」

え?と、目の前のサカヤキの人は首を傾いでから頷いた。

「はい。私は沖田総司、ですが」