「期待はしているんです。会津藩に。でも、結局は浪士たちにおびえて暮らさないといけない日常。期待している分だけ落胆が大きい」

そのように感じています。だから、挽回はできると感じています、と言ったら、ちょっとだけ表情をゆるめたお殿様。

「我らももっと会津、そしてご公儀のために、そして日々を営むすべての人々の為に尽力して参る所存です」

土方さんが、堂々を締めくくった。

とってもかっこよかった。



帰路。

山門をくぐり終え、黒谷の門も出たところで、わたしはやっと全身の力を抜いた。

「ま、褒めてやってもいいだろう」

土方さんは言いながら、わたしのおでこをピシッと弾いた。

「いだっ」

ほ、褒めてないし!

「上出来だった。ま、飯が食いたいとか言い出して恥はかいたがな」

そ、それは…とモゴモゴしてしまった。



「にしても、お殿様は…お嫁さんいらっしゃるんですかね?」

会津って、中学の時の修学旅行で行ったけど、東京よりもっと北の東北地方。そこからこの京都まで来てるんだから、日々大変だと思う。だから、ちゃんと包み込んでくれる大切な人の存在って大事。

「とってもお疲れだし、元気がないように見えました。もしそばで支えて下さる大切な方がいらっしゃったら、もっとお元気になられると思うんですが」

そう続けたわたしに、土方さんはしばし無言で顔を見つめてきて。

それからおもむろに、ほっぺたを抓ってきた。

「いだだー」

ちょっと!

いつもこれだよ!


「身を以て知っての言葉だな」


ニヤッと笑われて、ハッとしてつねられてるほっぺたが別な意味で赤くなった。