輪廻ノ空-新選組異聞-

自分からもたくさん沖田さんに触れた。

細いけれど、剣術で鍛えられた無駄のない逞しい体。

腕や背中、首から胸にかけて、

腰や腿。

すべてを余す所なく手を滑らせ、唇を滑らせた。

何度も何度も体を結びながら、愛情を注ぎ合った。

「時が…、止まれば…っ、いいのに…っ」

わたしは切れ切れになっている呼吸の合間に呟いた。

「本当に」

沖田さんも同意してくれながらも、「でも」と続けた。

時が動かなければ、私もあなたもこうして出会うことはなく、想いを寄せ合うこともなく、愛情を交わすこともなく、体を結びあうこともなかったんですよね…と。

「そうですね」

なんだか訳もわからず、泣きたいような気持になりながら、わたしは更に深く深く沖田さんを受け容れてた。

寸分も離れてたくない。この時間だけは。

五感の全てで沖田さんを受取り、自分を与え、尽きることのない熱情を迸らせたまま、わたしも沖田さんもついに力尽きて、眠りに落ちた。

沖田さんの胸に顔を埋め、しっかりとその腕の中に抱き込まれたまま目覚めた時、心も体も幸せに満ち満ちてた。



いつ病気になるんだろう。



ふとよぎった疑問に、頭をふる。

とにかく、細心の注意を払って、出来たら、病気にならないようにしたい。

ただでさえ命のやりとりの日々を過ごしてるんだから。

病気なんて、いらないんだよ。



「お蘭、目が覚めましたか?」



直接響いてくる沖田さんの声。

「はい。おはようございます」

わたしは沖田さんの胸から顔を上げて、しっかりと沖田さんを見つめて朝の挨拶をした。

「おはよう」

沖田さんは私の額に、ちゅ、と唇をつけてくれた。

しんとした室内。外からは鳥の鳴き声が聞こえて。薄明るい光のふんわりとした気配が充ちてた。

ただ…

激しかった昨夜の名残は、あちこちに残っていて。

室内にもだけど、自分の体とか…夜具とかに…。

なんだか…かなり恥ずかしいやら、でも…もう戻ってはこない時間だから切ないやら…。

「あっという間、でしたね」

と、沖田さんが呟いて。

わたしもうなずいた。

「夢みたいでした」

「でも、夢じゃないですよ」

と、沖田さんは自分の体を見下ろして、そしていたずらっぽく笑った。