ー高校二年 春ー
2年C組 教室
「塾の先生にチクられるんじゃない?サチのママ、キレたらやばいんでしょ?」
帰りのホームルームが終わり、教科書を鞄に入れながら、後ろの席のサチに私は言った。
「大丈夫!もう子供じゃないんだから、ママの言いなりにはなりたくないの!それに、はすみん達のライブずっと行ってないし〜」
いじけた顔をしてみせるサチはとても可愛かった。
私たち二人は、容姿も性格も正反対である。
サチは、大きな目とぷっくりした唇に、
小さい輪郭。人形みたいに整った顔。
髪はゆるい巻き髪で、色素の薄い茶色。
身長は意外と高く、声も高い。
学力も高い。
よく笑い、よく泣き、よく怒る。
愛されキャラってやつだ。
私は、感情を表に出すのが苦手で
よく無表情で怖いって言われる。
髪も伸ばしっぱなしのロングで、
前髪なんかも邪魔になれば自分で切っちゃうぐらい、テキトーだ。
身長は低い。声も低い。
学力も低い。
でも唯一、真面目に取り組んでいるのがバンド。
ギターに命を捧げてもいいと本気で思っている。
ギターバカってこの間、サチに言われたっけ。
