すると、今度はフウセンウナギが黒い碁石を打ちました。


パチン。


そして尻尾の先で器用に盃をとって、がぶりと酒を飲み干します。
空になった花びらは、そのへんにぽいっと投げ捨てました。
お酒くさくなった花びらだけでなく、食べ散らかしたクルミの殻、バナナの皮がだらしなく山積みになっています。


「げふ」とフウセンウナギが何度もゲップするのを見て、ネモはだんだん辟易してきました。


『お母さんはよく散らかしっぱなしにしないでって言うけれど、納得だね。この汚らしい場所は、居心地がいいとは言えないもの』


ネモは無言で肩をすくめます。


『それにさっき、挨拶も返してくれなかった。気持ちのいいものじゃないよ』


そこまで考えると、ネモの尻尾がだらんと落ち、耳もしゅんと下がってしまいました。


『お母さんの言いつけを破ってベッドに食べ物を持ち込んだから変な場所に迷い込んだのかな?』


なんだか無性にお母さんに抱きつきたくてたまらなくなりました。
あんなにお母さんに怒っていたはずでした。
たくさんのことを言いつけるし、帰ると言ってちっとも帰らない嘘つきです。
でも、それでも、恋しくてたまりません。
フウセンウナギやウワバミの行儀の悪さを見ていると、お母さんがどうして口うるさいのか、わかったような気がしたからでした。