「それでは最後に、新曲をお届けしようと思います」
「きゃあああ!!」
「『rose』」
歌うときよりもワントーン低く響いた響くんの声。

「イントロからもうかっこいいんだけど!」
「え、色気やば…」
タイトルコールを合図にステージが赤い照明に包まれて、どこか妖艶さを醸し出すイントロが会場中の期待を高めていく。

色気を纏ったような、挑発的な笑顔と仕草。
零される吐息や煽るような振付のたびに、観客席がわっと騒めく。

「…っ!」

そんな曲が、盛り上がりの最高潮を迎えたときだった。

え…なにこれ、停電?

突然全ての照明が落ち、辺りが暗闇に包まれて…次の瞬間、目の前に人の気配のようなものを感じて。

「―――」

それは一瞬の出来事だった。
耳に届いたのは囁くような…だけどまぎれもない、そーちゃんの声。

「2人だけの秘密だよ?」
「…きゃあああああ!!」

ほどなくして一筋のライトに照らされたそーちゃんがステージの中央に現れて、マイク越しに響き渡ったそんな台詞に会場中が割れんばかりの歓声に包まれていった。