「おはよう茉優ちゃん…って、いつにもまして今日はカウンターが輝いてるわね」

あとからやってきた実彩子先輩にそう言われて、はっとして手を止めた。
考え事をしていると心ここにあらず状態になるのは自分の悪い癖…なのだけれど。

「おはようございます…ちょっと考え事しながら掃除してたら、はかどっちゃいました」
まぁ今回はカウンターがピカピカになったのだから、結果オーライだろう。

「なにか悩みごと?眉間に皺寄ってたけど」
「うぇっ、本当ですか!?」

不思議そうな先輩の視線を受けて急いで眉間に手をやると、勢いが良すぎたらしくぺちっと子気味の良い音が鳴った。

「うぇってどういう擬音なの…ほんっと茉優ちゃん、裏切らないわよね」
「それって私、褒められてます?」

「褒めてる褒めてる」と苦笑しながら席に着いた実彩子先輩に続いて、自分も席に着いていく。

「あ、茉優ちゃん。なんかポケットから落ちそうよ」
「え?」
腰元に目を向けると、確かに例の紙切れが半分ポケットから顔を出していた。

「今ちょっと見えたんだけど…それ、エバーラスティングの?」
「エバーラスティング?」
どこかで聞いたことがあるようなその名前に、紙切れを手に取りまじまじと見つめた。

そこには確かに【Everlasting.Co 三上裕一郎】という名前が記されている。