「……私、今休憩中なんですけど」
卵焼きを食べ損なった恨みが口をついて出てしまった。
「俺は休憩とる間もなく働いてるけどな」
目の前の不機嫌に眉を潜めた日向先生と僅かに睨み合う。
「……で、なにか?」
折れたのは結局自分の方。
「ほれ、」
私の方から折れたことに少し満足したのか、フッと鼻で笑った日向先生。
おもむろに診察室の机の引き出しを開けて、中から取り出した小さめの紙袋を目の前に突き出してきた。
「な……」
なんですか?と問いかけそうになって、思わず息をのんだ。
「それ……」
目の前に差し出された小さめの紙袋を凝視して、思わず手を伸ばして触れようとしたそれは。
あっさりと日向先生の手によって再び引き出しにしまわれてしまう。
「なんだ、今でも好きなのか」
思惑通りだと言わんばかりの余裕の口調に、我に返って視線を上げた。
今でも……。
思い出してみれば、それを教えてくれたのはこの人だった。
有名な洋菓子店の限定スイーツ。
週に一度、土曜日に30個しか作られないそのスイーツの存在を教えられても、当時学生だった私には到底手に入れられるものではなくて、いつか食べてみたいと憧れていたもの。
卵焼きを食べ損なった恨みが口をついて出てしまった。
「俺は休憩とる間もなく働いてるけどな」
目の前の不機嫌に眉を潜めた日向先生と僅かに睨み合う。
「……で、なにか?」
折れたのは結局自分の方。
「ほれ、」
私の方から折れたことに少し満足したのか、フッと鼻で笑った日向先生。
おもむろに診察室の机の引き出しを開けて、中から取り出した小さめの紙袋を目の前に突き出してきた。
「な……」
なんですか?と問いかけそうになって、思わず息をのんだ。
「それ……」
目の前に差し出された小さめの紙袋を凝視して、思わず手を伸ばして触れようとしたそれは。
あっさりと日向先生の手によって再び引き出しにしまわれてしまう。
「なんだ、今でも好きなのか」
思惑通りだと言わんばかりの余裕の口調に、我に返って視線を上げた。
今でも……。
思い出してみれば、それを教えてくれたのはこの人だった。
有名な洋菓子店の限定スイーツ。
週に一度、土曜日に30個しか作られないそのスイーツの存在を教えられても、当時学生だった私には到底手に入れられるものではなくて、いつか食べてみたいと憧れていたもの。

