ポットのお湯の温度を90℃にセットして、お湯が沸くのを待った。


私の手元を見ながら黙ったままの日向先生。


私もあえて喋らず淡々と作業をこなした。


マグカップをお湯で温めたあと、コーヒーをティースプーンで2杯すくって入れて、少量のお湯で練るように溶いてお湯を注ぐ。


最後に砂糖を一つだけカップにいれて混ぜた。


「……どうぞ」


目の前にカップを置いて、すぐに彼と距離をとった。


そんな私を一瞥した後、日向先生はゆっくりとコーヒーを口へ運ぶ。


形のいい喉仏が上下するのを見て思わず視線を逸らした。


「ん、美味い」


満足そうに頷いてホッと息を吐く。


そんな小さ声が、吐息が鼓膜を震わせた時、何故か目元がじわりと熱をもった。


瞬きをしたらダメな気がした。


気づかれないように呼吸を深く繰り返しながら、私は日向先生から意識を逸らした。