軽くパニックになっている俺に彼女は冷静に俺に話しかけた


「あんた、もしかしてたこ焼き屋の」


「え、俺のこと覚えてくれたの!?」


嬉しい


単純にそう思う


だって一度しかめ会わなかったし、絶対忘れられてると思ってたから、あ、やばいニヤケが…


彼女に見られないよう慌てて手で口元を隠す


このとき薄暗くて良かったと初めて思った



「そりゃあバイト先の周りはある程度知っておかないといけないしね。それより、」


彼女は一気にズカズカと近寄りなるべく近くまで来ると「聞いてた?」と一言だけ俺に聞く


やっぱり近くまで来るとわかる


彼女はやっぱり綺麗で可愛い


目はくっきりとしたくりくりの目に大きな瞳まつげは長く眉毛も同じで長い


唇はぷっくらしてて髪はサラサラしてそう


今ははっきり見える何も細工をしていない顔と髪


そして意外と背が小さい


遠くからでは見えなかったいつもの姿だった


けれど、その姿はいつも目にしている彼女ではなく、別の人を見ているみたいだった




きっとこれが彼女の本心だろうと分かっている


自分の想像していた彼女とは正反対なのに嬉しかった


自分だけに見してくれる素顔みたいで


自分だけの秘密みたいで嬉しかった