さっきは、逃げてしまった。

逃げたから こうやって陸と逢えたんだけど… でも、
逃げたから 迷惑かけてる…

そんな事考えて
聞きたい事が喉まできているのに聞けない私がいる…


『心配させて、ごめんなさいね、哀川さん』
(…謝るのは私の方)
「ぁ…ぃぇ」
(馬鹿!私!ちゃんとはなさなきや!)

『陸とのこと、心配だったのよね』
(陸だって…私は哀川さんなのに…)

「別に…」

『学校には内緒なんだけど、私達義兄弟なのよ…』

「…はぇっ?」

…ぷっ…

唐突すぎて 変な声をだしたもんだから、先生と陸が笑った。

陸の笑みが、前と変わらなかったから私は少し安心して落ち着く事ができた。


「どういう事ですかだって陸は一人っ子じゃ…」

すかさず 陸が
答えた。
『俺には6歳違いの兄貴がいたんだ…でも、兄貴が二十歳の時に亡くなったんだよ、癌でね、』

「今まで 何も知らなかった…お兄さんがいたなんて…なんで黙ってたの?」

『言う機会も無かったし…ごめんよ』

申し訳なさそうに、
陸が言った。