結局放課後。
連絡しづらくて玄関で待ち伏せし、倫子を捕まえた。
いつもの帰り道をお互い無言で歩く。

時々付いてきてるか不安になってチラチラと後ろを振り返りながら、どう切り出そうか鞄の中に手を入れて考えていた。


「龍ちゃん、あのね・・・!」


先に口を開いたのは倫子の方で、このままではメンツが立たないと
彼女の声を遮って押し付けるように差し出した箱。


「・・・龍ちゃん、これ・・・」


倫子の手には見慣れたお菓子が収まっていた。


「・・・昨日けんかしたし、倫子がくれるか分からなかったから・・・
ならオレからわたそうと思って・・・」


朝コンビニ寄ってさ、逆チョコって言うんだろ、っていいながら、照れくさそうに渡された。


「龍ちゃん、これ・・・ラッコのマーチ・・・」


コンビニなら尚更、バレンタイン用の包装されたチョコがあるはずだ。
なのにいつも食べているラッコのマーチをチョイスするとは・・・。

「ばっ・・・!しかたねぇだろ!女子のレジしかねぇし!持ってきづらかったんだよ!」

何度か挑戦はしたらしい。
ただ、男子高校生がバレンタイン用チョコを買っていると思われるのが恥ずかしかったそうだ。


「・・・・・・ラッコのマーチは倫子すきだろ・・・」


段々と自信のなくなってくる声に愛しさを感じる。


「うん。好きだよ。ありがとう龍ちゃん」


嬉しそうにいうとホッとしたのか龍之介も笑顔になった。

一生懸命考えてくれたんだな・・・。

レジに持っていこうと頑張ってる龍之介を想像して笑った。


大好きだなぁ。



たまにはこういうバレンタインもいいかもしれない。


END