現れたのは二人の男子生徒。
 制服に付けられている学年章から彼らが二年生だと判った。
「演劇部、部長の羽野くん」
 眼鏡を掛けている生徒を木谷が紹介する。
 整った顔立ちに細いフレームの眼鏡は一見、冷たい優等生のイメージだが、名前を呼ばれ軽く礼をした動きの優美さと表情に妙に温かい優しさを感じた。
 そして、彼の後ろにいたもう一人の生徒を見て、柚莉花は固まった。
 見覚えがあったからだ。
 背は高く無駄のないスラリとした肢体。
 健康そうな肌の色に少し色を抜いた茶髪はよく似合っている。
 それ以上に見た者の視線を捕らえる存在感が彼にはあった。
「嶋中智博です」
 耳に心地よい印象的な声で彼は名乗った。
「遠山先輩が部誌で書いてた小説を、文化祭で上演してみたいのですが、協力していただけますか?」
 羽野が文芸部にやってきた主旨を告げる。