「垣内さんは、中学の時から演劇をやってたの?」
「はい」
「だったら何故、演劇部のなかったこの学校に?」
「去年の演劇大会で、アオイ先輩に逢ったんですよ」
 出てきた名前にピクッと反応してしまった。
 一年前に智博が口にした名前……。
「その時にアドバイスしてもらって入賞出来たんです」
 当時のことを思い出したように嬉しそうだ。
「智博先輩の演技も見る機会があって。これはもう、二人の元で演じたいって思ったんです」
 去年の秋に智博たちが演劇同好会として出演した演劇大会。中学で演劇をしていた桜も偶然、舞台を見る機会があった。
 智博だけが舞台に立ってのひとり芝居。それで入賞を果たしたという実力者。たった二人しかいないために部として認められていなくても同好会として学校に認められているのはその実績のためだ。
ただの一ファンになった様子で力説する桜。
「アオイ先輩は演技しないけれどとってもカッコいいんです」
「…アオイ先輩って……?」
「あぁ、部長です」
「え?! 羽野くん?」
「はい。羽野蒼先輩ですよ」