「素直じゃないのね! でも、とっても綺麗。砂の魚って初めて見たわ」


素直なナギが思ったまま口にすると、姫君はまんざらでもないようです。


「私たちは砂に住む生き物の中で一番美しいの。星がまたたく音を食べるのが好きなのよ」


ナギは星がまたたく音なんて聞いたことがありません。
けれど、それはそれは美味しそうだと舌なめずりをしました。


「どうして旅をしているの?」


「砂漠よりもっと星が美しく見える場所を探しているの。だって、ないとは言い切れないでしょう? だから旅に出たの」


姫君とナギが話している間、ラクダはアラシにそっと耳打ちしてきました。


「姫君に内緒でお願いしたいのですが」


「なんでしょう?」


「故郷の砂漠が恋しくなるようなものをお願いしたいのです」


「どうしてです?」


ラクダの話によると、砂の魚の王様は早く姫君に帰ってきてほしがっているというのです。


「それで、姫君に砂漠を思い出させるような何かを作っていただけたらと思いまして」


「なるほど。では、窓際の席でお待ちくださいね」


アラシとナギは台所でこそこそ相談を始めました。


「砂漠っぽい食べ物ってなんだろう?」


「お兄ちゃん、砂漠みたいな色のものは?」


「ナギ、それはいいね。砂漠みたいに平らなものでもいいんじゃない?」


「お兄ちゃん、それはいいわね。じゃあ、パンケーキにしましょうよ」


さあ、メニューが決まりました。