「旅の者ですがよろしいですか? 客が食べたいものをなんでも出すというのは本当でしょうか?」


「ええ、そうですよ」


アラシが自信たっぷりに答えますが、ラクダは不安そうな顔をしたままです。


「本当に、なんでも?」


「ええ、なんでもですよ」


ナギが胸を張ると、ラクダの背中から鈴が鳴るような声がしました。


「嘘ばっかり!」


アラシとナギは目を丸くしました。金魚鉢の中には砂しか入っていないと思いきや、一匹の魚が勢い良く飛び出したのです。
しかも驚くことに、砂から出てきた魚はラクダのそばをふよふよと漂っているのでした。
ラクダが誇らしげに紹介しました。


「こちらは砂漠に住む『砂の魚』一族の姫君でございます」


姫君は真っ白な体に長い虹色の尾びれをした美しい魚でした。砂金が転がるような声でこう言います。


「なんでもなんて、嘘ばっかり!」


すると、ラクダが落ち着いた声でこう説明してくれました。


「姫君は『本当でしょうね?』とおっしゃっておいでです」


「はあ」


ナギは呆れながら姫君を見つめました。