え、と私は立ち止まって守屋先生を見る。守屋先生は目尻をくしゃっと垂らして笑った。
「せっかく作ったのに、せっかく持ってきたのに、誰にも渡せない方が辛くないか?失敗作って澤田は言うけど、受け取った方はそうは思わないかもしれない」
守屋先生の言いたいことは分かる。でも私は昨日、作ったお菓子を味見した。美味しくなかった。こんなもの、誰が受け取っても失敗作って思うに決まってる。
「でも、こんなもの食べれたもんじゃ…」
「こんなものとか言うなよ。大丈夫!俺はお菓子が大好きだから」
守屋先生はよく分からないフォローをすると、半ば強引に私のバッグからラッピングされた袋を1つ取り出す。
あ、と思った時には守屋先生は袋を開けてお菓子を取り出していた。
「へぇ、ガトーショコラ作ったんだ」
守屋先生は豪快に一口目を口に入れる。先生が食べている間、少しばかりの沈黙が流れる。
ーーーどうせ美味しくないでしょ?失敗作って思ったでしょ?私をバカに思ったでしょ?
もうどうとでもなれと思った。私は半分、自暴自棄のような考えになっていた。
守屋先生は二口目でガトーショコラを平らげた。
「……うん、確かにちょっとパサパサはしてたかな」
守屋先生はポツリと呟く。
ほら、やっぱり美味しくないんじゃんーーーそう私が言おうとした時、
「でも、」
守屋先生は私の頭に手を置いた。


