ほろ甘ガトーショコラ



私はリュックサックをギュッと強く抱える。


ーーーあの笑顔を私に向けてほしい、だなんて。


瞬間、守屋先生と目が合う。
私は慌ててパッと目を逸らした。

目が合うだけで、こんなにドキドキする私。普段ならもう少し落ち着いていられるはずなんだけど今日は何故か落ち着かない。バレンタインデーだから?変に意識して緊張してる?


「………梨香、これ」


恥ずかしさを隠そうと、私は梨香に押し付けるようにして小さな紙袋を渡す。紙袋の中に入っているのは、ガトーショコラだ。


「梨香、私、今年もガトーショコラ作ったの。今年は友達と部活メンバーと……あと一人渡したい人がいるんだ」


私も守屋先生にたかるあの子達と同じように、ノリでお菓子が渡せたらどれだけ楽だろう。

でもそれができないのはーーー
それほどまでに先生のことが好きになっていたから。


「……うん、ほんとに応援してるから!」


梨香は私の手を握ると、目尻を垂らして笑った。