「マカロン、健くん美味しいって食べてくれるといいけどなぁ…」


梨香が小さく呟く。

梨香は3ヶ月ほど前、隣のクラスの健くんと付き合い始めた。
陸上部の選手とマネージャーの部内恋愛。
同じく陸上部マネージャーとして二人の馴れ初めを見てきた私にとって、本当にお似合いで憧れのカップルだ。


「美味しいって言うに決まってるよ!こんなに一生懸命で可愛らしい彼女持って、健くんも幸せだこと」


梨香が健くんと付き合い始めてから、お弁当作りやお菓子作りなど色んなことを頑張ってきたのを知ってる。
どんどんキラキラ輝いていく梨香を見て、恋愛っていいなぁ彼氏っていいなぁとつくづく思う。


「……ところで未羽は、どうすることにしたの?」

「えっ……!」


突然、振られた話題に私は一瞬たしろぐ。
聞かれることは予想していたけど、いざ聞かれるとなるとどうにも恥ずかしい。


「ギリギリまで悩んでたでしょ?結局、何作ったんだろうどうするんだろうって気になって」

「え、えっとねぇ、今年は…」


私は机に掛けていたリュックサックのファスナーを開ける。
私だって一応女子だ。女子高生だ。
イベントに乗っかってお菓子くらいちゃんと作る。
今年は友達用と陸上部の選手たち用と、あとそれからーーー


「お〜このクラスは随分美味しそうな匂いがするなぁ!」