「お、手作りのお菓子かぁ。嬉しいねえ」
私はファスナーを開け、お菓子を入れた袋を取り出す。友達や部活で配る用の袋とは違う、少し洒落た柄にリボンで可愛くラッピングした袋。
それが守屋先生用のお菓子だ。
「……先生、1年前のバレンタイン覚えていますか」
守屋先生に袋を渡す。守屋先生はありがとう、とお礼を言うと私に笑顔を向けた。
「あぁ、もちろん覚えてるよ。去年も澤田からお菓子もらったなぁ…って、あれは俺が半ば強引にもらったんだっけな。あれからもう1年経つのか、早いなぁ」
守屋先生は懐かしむように受け取った袋を見つめる。
あれから1年。私にとってもキラキラして楽しくて、あっという間の1年だった。
「これ、今ここで食べてもいい?」
私はコクンと頷く。
守屋先生は私のその反応を見ると、袋を開けお菓子を取り出した。その瞬間、ふわっと香る甘い匂い。
「おお、ガトーショコラ作ったんだ」
守屋先生は豪快に一口目を口に入れる。それが1年前の光景と重なり合うように見えた。
ーーー私は1年前から変わったのだろうか。成長したのだろうか。
守屋先生は2口目でガトーショコラを平らげた。
「………どうでしたか」
ポツリと呟くように問う。守屋先生は目尻を垂らして微笑んだ。
「うん、表面はサクッとしてるのに中はしっとりしててすごい美味しかった!何より、ほんのり甘めに仕上がっているのがいいよな。俺の好みだわ」
そりゃそうだ。これは守屋先生の好みに合わせて作ったんだから。守屋先生がいつもコーヒーに入れる砂糖の量。それを見て、先生はほろ甘が好きなんだなぁと前から気づいてたんだよ。


