守屋先生は意地悪く笑うと、手でコーヒーを飲む仕草を私に見せてきた。
ーーーまるで、私をお子様扱いするように。
カァッと顔が熱くなる。
「っ…もちろん飲めますけどっ?!先生、私をお子様扱いしないで?私、味覚はもー大人だからね!」
「ほ〜言うねぇ。それはそれは、大変失礼致しました〜」
守屋先生はハハッと小さく笑い声を漏らしながら、隣の部屋にある給湯室に入っていく。
……完全にバカにされたな、今。
私は給湯室に入った守屋先生に向かって、小さく舌を出す。
そりゃ私は守屋先生にとっては生徒だし、お子様かもしれない。でも私は守屋先生を好きになってからの1年…勉強に料理にお菓子作りに。色んなことを頑張ってきたんだーーー。
私は机の上に置いてある、先ほど守屋先生が解説をするために使用した紙を眺める。
守屋先生の字は正直、殴り書きのような字でお世辞でもあまり綺麗とは言えない字だ。
……よし、ここで私が図表と今日教えてもらった内容を分かりやすくまとめておこう。そうすれば守屋先生も私に教えた甲斐があったと思って感心するだろう。
そうと決まれば、と私は守屋先生の机の一番上の引き出しに手をかける。
この引き出しには大量の白紙が入っている。何度か守屋先生の机で勉強したことがあるから、その程度はリサーチ済みだ。
人の机の引き出しを勝手に開けるのは無礼でしょーーー思いながらも、勉強のためという口実とバカにされた仕返しの気持ちも込もり、引き出しを開ける。
しかし、その引き出しの中に白紙は一枚も入っていなかった。代わりに、入っていたのはーーー。
どくん。
心臓の音が大きく鳴り響く。
ーーー見たくないものを見てしまった。
どくんどくん。
鳴り止まない動悸を抑えながら、私はゆっくりと引き出しを元に戻した。


