3限目の授業終了のチャイムが鳴り響く。
授業は、守屋先生の世界史だった。
「はーい、じゃあ今日はここまで。分からなかったり質問がある人は、聞きにきてなー」
守屋先生のハキハキとした声。私は斜め後ろに座る梨香を横目で見る。梨香は頑張れ!というように右手で小さくガッツポーズをした。
「先生っ!」
私は荷物整理をしている守屋先生の所へ足早で駆け寄る。
守屋先生は私に気がつくと、いつもの笑顔を向けてくれた。
「おーどした、澤田。質問か?」
「はい。さっきの授業で質問というか、気になった箇所がいくつかあったので……」
私は手に持っていた教科書を開き、パラパラとページをめくってみせる。
ーーーこれは作戦、いわば戦略だ。
さすがにこのタイミングでお菓子を渡す勇気は私にはない。こんなに大勢の人がいる教室で渡したりなんかしたら、どんな噂を立てられるか知ったもんじゃない。
徐々に心臓がバクバクしてくる。頑張れ、自分。
「このページの、第一次世界大戦の国関係についてと、あとこのページの条約の詳しい内容と、あと……」
いくつかページを見せて指を指すと、守屋先生は困ったように頭をかいた。


