切れた指先が、心なしかじんじんと痛い。気のせいかな。それとも、自分に対する嫌悪感の現れなんだろうか…




ダン、ダン。


不意に後ろの方でボールをつく音が聞こえた。




さっきの…?




はっとして振り返ると、倉庫の入り口に白いバスケユニフォームを着た男の子が立っていた。



片手でボールをつきながら、少し苛立ったように無表情だったが、鼻筋の通った端正な顔つきなのが見て取れる。




「一ノ瀬くん…」




私は彼の名前を知っていた。



─と、いうのも、一ノ瀬くんはうちの学校ではとても有名人で、ついさっきの部活でも、かっこいいだのバスケが上手いだので女子の会話が盛り上がってたところだ。



でも、私は彼とは違うクラスで話したことも目が合ったことすらもなくて、ましてや興味なんてほとんどないと言ってもいい。




それくらい関わりがなかったにもかかわらず、私は素直にもかっこいいと思った。