わかったという意味を込めて首を縦に振ると私は座った、けれどなんだかむずむずしてもう一度席を離れた。



この家に引っ越した時、千夏さんの要望でタイル張りにしたおしゃれなキッチンでは、千夏さんが今晩のおかずの唐揚げを丁寧に皿に盛り付けていた。




私は黙ってその横に立つと、千夏さんは一瞬驚いたような表情をして、いつもの笑顔で




「なあに〜?結衣ちゃん」




「千夏さん…」





口を開いた私に、今度こそ千夏さんはしばらくあんぐりとしていた。





私は彼女の方は向かずに手元を見つめる。






まだ、千夏さんをお母さんとは呼べない…

でも、それでも何かが私の背中を押している。
それは、今日の一ノ瀬くんの言葉かもしれないし、お母さんの人形たちかもしれない。





お母さんのことは許せないし、お父さんが幸せでいてほしい。だけど、私の中で千夏さんの存在がまだ揺れている。