取り敢えず、鞄を置くために二階の自分の部屋に向かった。
部屋は朝と変わらずどんよりしていた。
私はいつもどうりベッドの上にのって顔を押し付ける。
そんな匂いなんてないけれど、布団は涙の匂いがした。
数分後、起き上がって鞄の中のものを出し始める。体操服、弁当箱、教科書、部活着…。
「あ…」
不意に手が止まる。部活着と一緒に折りたたんで入れられていたものが目に入った。
水色の肌触りの良いスポーツタオル。
左下にロゴが入っていて、一ノ瀬くんにとても良く似合った爽やかな柄だった。
「これで顔ふけって言われても…」
ずっと硬かった頬がふにゃっと緩んだ気がした。