「…。それで…?」




「私は全部隠した。もうお父さんの寂しげな背中は見たくない。お父さんがお母さんを思い出さないように、千夏さんと幸せになるように、私はお母さんの置いてったもの全てを自分の部屋に隠したの。」




透き通った茶色い視線に支えられているのを感じる。


自然と言葉が出てくる自分に驚きながら、わたしはまた言葉を紡いでいた。




「再婚してから、お父さんは見違えるように変わったの。前の職場をやめて、新しい仕事にかえた。休日も家にいるし、私の買い物にもよく付き合ってくれるくらい。



千夏さんもすごく優しくて、家族ってこういうものなんだなって少しずつ実感するようになった。





でも、そういう実感が積み重なっていく度に、自分だけ取り残されている気がして寂しかった。
部屋のあちこちに追いやったお母さんのものが、私を責めているようで。」



でも、と私は続ける。




「私は何も言わない方が良かったの。今も昔も私にとっての一番はお父さんとお母さんで、二人に幸せになって欲しい。だから、お父さんの今の幸せを壊したくなかったの。」




それに、




「お父さんとお母さんを壊したのは私だから…」