また私の手首を握りしめ、一ノ瀬くんは言った。
「お前、俺に言えるじゃん。俺に感情的になれるんじゃん。なら、あいつらにもぜってぇ言えるし。」
それに…、と彼は続けた。
「お前が何も言わなければ皆が幸せになるとか、本気でそう思ってんの?違ぇよ、お前の気持ちが相手に伝わらないとほんとの幸せって言えねぇんだろーが」
彼はそこまで言うと、私の手首をふっと離し、力が抜けたようにしゃがみ込んだ。
私は立ちすくんでいた。
ずっと、一ノ瀬くんの崩れた表情が頭から離れなかった。
私はまだ何も知らない。気づけてないことが多すぎる。
今まで私は何をしてきたのだろう。一ノ瀬くんにあんな顔をさせてしまった。彼を困らせてしまった。
私は彼の横にしゃがみ込んだ。
もっと知りたい…
彼のことも。私のことも。
気づけば、自然に口が動いていた。