「気をつけ!礼!」
「ありがとうございましたー!」
コートに響く女子の甲高い声が、真夏の夕陽に吸い込まれていく。橙色に染まる校舎横のテニスコートは、人気が無くなり少し寂しそうに見えた。
「お疲れ様でした」
ラケットと水筒を持って次々と部室へ向かう先輩達に声をかけ、私はしゃがみ込むと、カゴの中のボールを数え始めた。
高校生になって3ヶ月が過ぎて、部活にももうなれた気がする。違う意味でも…。
ふと顔を上げると、目が合った私と同じ1年生の1人が駆け寄ってきて、パンっと顔の前で手を合わせた。
「いつも、ごめんね!」
もちろん私はにこっと笑顔を貼り付けて、大丈夫だよまた明日ね、とバイバイ手を振る。
ほっと息をついて、またね、と走り去る彼女の後ろ姿を見ながらふと考える。