「これが、浦和さん……? 寿美(としみ)って読むの?」
「トシミではなく、スミだな。……去年の夏休みに、心臓のバイパス手術を受けている。体育の授業も休みがちだ」
「それって、難しい手術なの?」
「どうかな。体内の別の場所から血管を持ってきて、心臓にしっかりとした通路をつなぐんだ。どのみち胸を切ることに変わりはない」

 潤くんはパソコンの電源を落として、ベッドに戻った。

「そのコ、去年、大河や将人や千晴ちゃんと同じクラスだったみたいだぞ」
 そして、今では大河センパイと一緒の2年2組。

 ……。
 ………。
 …………。
「……それで? ほかに、情報はー?」

 潤くんは寝返りを打って、あたしに背を向けた。
「知らね。このデータはオレがそろえたオレ専用のものだ。一般人は閲覧禁止なんだ。プライベートな内容もあるからな。ブラックリストは風紀を取り締まるうえで重要だったから、かなり力を注いで作ったけど、それ以外の情報量は多かったり少なかったりで、かなりかたよっているよ。浦和さんのデータは少ないほうだな。欠席が多いせいかな。一度も委員会や部活動に所属していないし、規則違反もない。学力テストも掲示対象の学年50位に入ったことがない。交友関係も……あ、それは千晴ちゃんあたりに聞けばいいな。以上。……オレ、また寝るからね。6時に起こして」