「自分がなんとも思ってない人から好かれるのって、迷惑なんだよねー」

 鏡のなかのあたしに同意を求めるように言った。
 わかるから。よーく、わかるから。……あたしがそうだから。
 相手の想いに応えてあげられなくて、あたしはその人なんてまるで眼中になくって、これから先もきっと進展はないって確信があって、でも相手は、ひょっとしたら……って、思ってて。
 そのわずかな希望を、あたしがいつも壊す。
 もう、うんざり。
 言葉にこそ出さないけど、もっとよく見ればいいのにって、思っちゃう。

 ……あたし、彼ができたって、尽くさないよ。
 爪だって短いし、口紅だってもらい物の(お父さんからもらったディオール)一本しかないし、千晴センパイほど日焼けに気をつけていないし。
 本棚にはマンガしか並んでいないし、流行の俳優が出ている映画は必ずチェックするし。
 ダイエットしなきゃ、って言うくせに、腹筋は三日と続かないし、デートのときでもきっと、大好きなミルフィーユを大口で食べちゃう。
 もちろん手編みのマフラーなんか、編めないしね。

 そんなあたしのこと、よく知りもしないくせして、
「そういうこと言うコだとは思わなかった」
とか、
「なんか……ちょっと違うね」
とか、言うんだから。

 あなたの都合で勝手にあたしに着色しないでよ。
 もうホント、いったい何人にそう言ってきたことか。