入り口の右から壁伝いに順に挙げていくと……。
 ピアノ。出窓。MD搭載のミニコンポ。テレビとビデオ。角に、20センチ高くなっている6畳の畳。本棚。角に、勉強用の机。パソコン機器。ベッド。で、入り口の横に備え付けのワードローブ。
 一応、フローリングの洋間。
 広さは畳に換算して、約36畳。
 部屋を見れば、その人の人格がわかる――そんな法則が、世の中にはあるのかもしれない。


「部屋というか……。潤くんらしいんだよ。潤くんの雰囲気にぴったりすぎる」
「……オレが腹黒い、ってことか?」
「まさかあ。……このボール、早智子さんがどれだけ潤くんを理解しているかをよく表していると思う。だから、このボールの存在感イコール早智子さんの存在感なの。この部屋にはいつも早智子さんがいるんだよ」

 潤くんは、あははと笑った。

「そうかもしれないな。考えてみたら、これをもらったのは、あざみがオレん家に来る直前だったし……。そうだ。『お守りみたいなものだ』って、早智、言ってた。なんだよ、これ、あざみ除けかよ」

 大笑いする、潤くん。

「そんな必要ないのにな。もしオレがそんなふうに誘惑に弱い奴だったら、湯上がりでふらふらしているあざみを、とっくの昔に押し倒しているって」
「……はは」
 湯上がり、どころか、今のあたしはパジャマにカーディガン姿。
 早智子さんという人がなかったら、いくらいとこ同士でも、こんな格好で潤くんの前に出られない。

 もっとも……。
「いくら潤くんでも『まさか』ってこと、あるしね」
 プリンターから紙を切り取りながら、潤くんはうなった。
「そうだな。もしオレが早智に捨てられて、あざみが将人とうまくいかなくて、オレんとこに泣きついてきたら……どうなるか、わからないな。オレ、自分を抑えられるかなあ」
「無理無理、絶対無理。欲望の塊だって、早智子さんも言ってた。あたしもそう思う」
「……言ってくれるね」

 わあ、そこでゆらりと立ちあがるのやめて! マジで襲われそうで怖いよ!
 あたしは結構本気で逃げた。