しばらくそうしていたら――坂を登ってくる人がひとり、いた。
 うちの中学の男子生徒だ。
 潤くん、と思って、立ちあがったけど、違った。
 こちらへ近づいてくる。
 意外な人物だった。
 それは、毛利航平。
 私のモト彼。

 立ったものの、どうしたらいいかわからなかった。
 立ち去るのも、毛利くんと話すのも、おっくうだった。
 ぼうぜんとしていた。
 毛利くんの幅の大きい歩みを眺めていた。