秋ちゃんが私のノートを奪いつつ、答えてくれた。
「うん。生徒会長になって以来だね、きっと。あの演説はなかなかすばらしかったもの。一年といわず、ずっとついていきますって感じだった。学年1位の成績もインパクトがあったけど……。もともと勉強ができる人だったんでしょう?」
 半分くらい事情を知っている未歩が、興奮した口調で言った。
「でも早智子ちゃんの話だと、一学期の中間では181番だったって。ねえ、早智子ちゃんっ」
「あ。うん。そう……みたいね」
『それまでずっと手抜きをしていたからね』とはいくら私でも言えない。
 今はちゃんとしているんだし、現生徒会長だし。     
「すごいよねえ。いったい何者なの」
「一年生にも人気だけど、三年生にも熱狂的なファンがいるらしいよ。……気をつけたほうがいいよ、早智子ちゃん。もうじきバレンタインだしさ」

 ――そう言われてもね。
 私と潤くんって、ちょっと仲がいいだけで、つきあっているわけじゃないから。
 でも口にだしたらまた話がややこしくなりそうだから、言わない。