一月一日――潤くんと私は、一緒にいるところを大勢に目撃されてしまった。
 クラスの子とか、元生徒会長の清水センパイとか、いろいろ。
 女の子たちは遠くで見ているだけで、声こそかけてこなかった(邪魔しちゃ悪いとでも思ったんだろうね)。
 反対に男の子たちの反応は顕著だった(邪魔しちゃおうと思ったんだね)。

「なに? おまえら、そういうことになってたのか-?」
「きたねーぞ、潤。そういうのを越権行為とか、公私混同っていうんだっ」
 そういう手合いのいっさいがっさいを、潤くんがやっつけてくれた。
「そうだよ。うらやましいだろ」
「年が明けて、賢くなったな。赤石」

 誘ったのは私のほうだった。
 潤くんはそれを言いわけにしなかった。
 一緒にお参りしたことより、そっちのことのほうがうれしかった。
 私はただ、ありがとうと言った。
 案の定、潤くんはなんのことかわからないような顔をした。
 わかっているくせに!

「あ」
「どうした? 忘れ物か?」
 混雑した帰り道、神社の階段の途中、足をとめた私を振り返って聞く、潤くん。
「うん。……恋愛方面、祈ってなかった。もう一回、行ってくる」
「……オレがいるだろ」
 二段上、やっと目線が同じ高さになる位置から、私はまじまじと潤くんを見つめる。
 潤くんは繰り返し、言った。
「オレがいれば、いいだろ」


 どうしてこの人は、いけしゃあしゃあとこういう発言ができるんだろう。
 あの『キス未遂』の直後も、堂々と、っていうか……けろっとしていたしさ。
 きっと、あのくらいのことで(……って、おおごとだよ)めちゃくちゃ照れてた私を面白がって見てたんだろうな。

 私は手袋をした手をポンっと打っておいて、
「だったらなおさら、そういうわけにはいかないわ!」
「おいこらっ、どういう意味だよっ」
 潤くんに勧められて髪をおろすことにした私。
 けれども『なんでも言いなり』じゃない。これは、ささやかな抵抗。


 このくらいの意地悪なら、神様も許してくれるはず。