陸の上(?)なら、すたすたと歩き去るとこなんだけど……プールの中はそうはいかない。
 がんばって歩く。それでも私の場合、泳いだときより確実に進む。
 潤くんも歩いた。私と同じ速度で。
 潤くんの向こうのコースでは、信じられないような速さで他の水泳部員がすいすい泳いでいる。
 でも、あの人たちより、私の隣を歩いているこの人のほうが速いんだ。
 県内の中学生のなかで、種目の違いこそあれ、いちばんなんだ。

「……」
 私は歩くのをやめた。
 進行方向を向いて、高飛車に言う。
「もしおぼれたら、すぐに助けてよ」
 私よりさきに進んでいた潤くんが、勢いよく振り返る。
「まかしとけ。早智にだったら人工呼吸でもなんでもしてやる」
「そこまでしなくていいよ」
「遠慮深いなあ」
「……」