「それじゃあせっかくだから、おじゃまします。……!?」
 四人用のテーブル。
 会長と潤くんが隣あっていて、会長の前の席があいていて、その隣にはいつかの調理部予算防害男の柔道部・本郷センパイがいた。
 で、こっちを見て笑った。
「どーぞー」

 嫌だ、この男の隣なんて。まえに生徒会長の涼やかなまなざしがあったとしてもっ。
 ううん、勉強しにきたのよ。
 まわりに誰がいようと関係ないわ。
『心頭を滅却すれば火もまた涼し』っていうし。
 でもやだ。
 本能が、こんなむさい男のそばはごめんだと言っている!

「あ。本郷センパイ、オレと交替しよっ。オレが早智の隣ね」
「なんだよ。俺だってここがいいぞ」
「それなら俺がそっちに座るよ。さ、どうぞ」


 結局、会長が代わってくれた。
 私は潤くんの隣。斜め向かいが本郷センパイ。
 参考書を開くや否や、本郷センパイはさっそく仕掛けてきた。

「あんまり見せつけるなよ」
 体言、用言、比喩に修飾語。なんのことやら。      
「以後気をつけます」
 潤くんがかしこまって答えた。
 ああもう、どうだっていいのよ、こんな男のたわごとなんて。
 潤くんもいちいち相手にするなっつーの。

「あんた、生徒会副会長になるんだって? やめとけば?」
 これは、私に向かって言ってるみたい。
 ええと、ギジンホウの『ギ』は『疑』ではなく『擬』ね。

「あんたには向かないよ。向いてない」
 うるさいわね。少し黙りなさいよ。
 私は目線すらあわせようとしない。だって、ムカつくことばっかり言うんだもん。

「おい。俺は先輩なんだぜ。そういう態度を取っていいわけ?」
 ぎょっとした。骨張った手が私の腕をつかんだから。
 なにすんのよって、振り払おうとしたら、誰かの手がそれより一瞬早く動いた。