私、この川崎潤という男の子がいまいちわからない。
 クラスのなかでは、かなり地味な地位にいる人。
 成績はパッとせず、スポーツはまあできるほうみたいだけど、いちばんの特技は不明(やっぱ水泳?)。
『クラス全員の名前を書いて』と言われたときに、ひととおり書いて、名簿順にもういちど指折り数えたときに『ああ! いた』って、思い出されるような、微妙な存在感。
 それほどおしゃべりなほうではないらしいけど、誰にでも気さくに話しかけてる。
 もちろん私にも。
 そんなとき、まるで昔からつきあいがあったみたいに錯覚してしまう。
 ひょうひょうとしてるっていうか、どこか不思議な人。

 
 あるとき彼はこんなことを言った。
「柏さんって、迫力あるよな」
 体の小さい私には、態度がでかいって意味にもとれて、心外だった!
「オレ、生徒会の予算決議のときのこと、すげえ印象に残ってるんだ」
 そう聞いて、ああ、あのときか、と思った。

 ――憶えてるわ。
 忘れるわけがない。

「カッコよかった。見ていてさ、気持ちがスッとした。――今思うと、メチャメチャ柏さんらしい発言だったよな」
「それって褒めてるの? けなしてるの?」
「褒めてるにきまってるだろ」
 日焼けした顔に白い歯をのぞかせて、爽やかに笑う、川崎くん。
でも私、あのときのことを思うと、今でも胸がムカムカしてくるの!