女子高生・それは夢とキラキラとおしゃれで出来ている。

新学年・それはトキメキとドキドキが来る季節。

新学期・それは………



「もう地っっっ獄以外の何者でもないんですがこれはっっっ!?」

ダンッと部室の長机をイライラに任せておもいっきり叩く。机の上に置かれたトーンやらペンやらがカタンッと軽い音をたてて転がった。
トーン貼り中だった目の前の友人が恨めしそうに睨んできた。どうやら今の衝撃でカッターが原稿を突き破ったらしい。ごめんて。

「みおたや荒れてんね~?どったの、クラスにまだ馴染めてない感じ??」

おっつ~、と軽い感じに慰める隣のバリギャルっぽいのにがっつりオタク女子な美羽(みう)は今も某写真アプリとか青い鳥とかいじってそうな見た目をしているが、実は見ているのは某イラストサイトである。
そして目の前の絶賛原稿中の某翼を授けるらしいエナジードリンクと怪物エナジードリンクを二刀流し、華麗に三徹目をキメた黙っていればお人形のようにかわいい親友の花梨(かりん)は幽霊のように青白い顔でブツブツと何かを呟きながらトーンをがさがさ切っている。はっきり言ってホラーだ。ホラー以外の何者でもない。

「………出来たーーー!!勝った!私は勝ったぞ!!」

机から飛び出すように立ち上がった花梨。
机がものスゴく揺れた。拍子に膝に机の足が当たり私は悶絶する。それに花梨は当然の如く気づいていなかった。今度から原稿手伝わんぞおいコラ。

「かりんたや~、みおたやに机当たってんよ~~?形だけでも謝っといた方が良くない?」

ものすごい勢いでお気に入りのイラストをブックマークする片手間に美羽が告げる。
その言葉に今気づきました、と言わんばかりに花梨が振り返った。

「…テヘペロッ♥」

舌を突き出し、某お菓子のキャラクターの顔真似をする花梨。ママの味ってか。

「美桜さん、判定は?」

真面目な顔をした美羽がいつになく真剣な声で私の方を見る。そんなん、1択やろ…。

「許す訳なかろうとも。」

私はゲンドウポーズをしながら神妙な顔で容赦なく告げた。

「だよね~」

へにゃぁ~~っと数万溶かしたような顔をした花梨はその場に座り込む。
うちの部室は電気じゅうたん完備だ。冬でも寒くない。

「いやぁ~でも脱稿出来て良かったよ~。これで心おきなく推しのラバストが買いに行ける~…。」

「ソウダネ~。そういえば、みおたやのクラスパリピが多いんだっけ?御愁傷様~。」

「くっそー、みんな他人事だと思いやがって…。こっちは死活問題なんやぞ!」

テスト中はいい。テスト中は良いんだよ。
みんな静かだし。
だけどなぁ、問題は…

「その後の席替えなんだよなぁ~…」

想像するだけで胃が痛い。
帰りたい。
私の席は勝手に決めておいてほしい。

「せめて地味~な席に着けたらいいんだけど…」




だけど現実ってそうはいかないものだ。

そう、今このときみたいに。

「今日からよろしくね、美桜さん。」

にっこり微笑むクラスの人気者。
その人が座る席は非情にも私の隣りで。
波乱の学生生活の幕が上がる音がする。

(よりにもよってお前が隣の席かよっ!?)

私の苦労の日々はとうとう訪れたのである。