願う先にある想い

優しい由理ちゃんだからこそ、美実を思う事が出来た。



だから、嫌っていても両親に酷い事をしても決して憎むこともしなかった。



でも、あの時の由理ちゃんが言った言葉の判断は正しかったはずなのに、美実に対しては正しくなかったのかもしれない。



何が正しいのか悪いのか、今では何も分からない。



『美実…私はね。一度変わってしまったものを簡単に変えることができない事くらい理解している。
それでも、少しでも距離を縮めるものがあるのなら変えたいの。昔のように…』



『そんなの無理に決まってるでしょ、今更』



『そうね……。
それでもお母さん達だってきっと望んでるはず』



『はっ?』



由理ちゃんがその言葉を言った瞬間、まるでスイッチが入ったように目に力が入ったと言っていた。



それまでの由理ちゃんの会話は、どこか抜けているような感じだった。



『何が?』



『えっだから…お母さん達も昔みたいになりたいといと望んでる』



『…はあ?』



それは、まるで美実の触れてはいけないところに、逆鱗を触れてしまったような感じだったらしい。



『んなの無理に決まってるだろうが。何が昔みたいになりたいよ。自分たちが私に何をしたか、あんたらのせいで私を狂わせた癖に。何 善人なことをほざいてるんだよっ』



『…み、美実?』



『あんただって何しても変わらないから、だから無視して結局は逃げてんでしょうがっ
本当は来るつもりなんて1ミリもなかったくせに。
それは支配されていたから?でも、それも自分でしょうが!』



『それは…っ』



『言える?はっきりと確実に?』



『…っ』



逃げてる……。



逃げてる?



逃げてる。



支配されていたとは言え最初からずっと逃げ続けていて、だから見捨てたとしか言いようがなく反論も出来なかった。



『確かに私はずっと美実から逃げてたのかもしれない。
でも、お母さん達はただ厳しくしてたのだって、比較していたのだって、全部美実の為であって決して痛めつけようとか』



『知ってるわよ。あんたみたいにならそうとしようとしていた、ただそれだけ。でも、私からすれば虐待なんだよ。あんたと私は生まれついた時から何もかも違う。
そんな人間が同じようになれるはずがないんだよっ
それが愛された人間と愛されない人間の違いなんだよ』



そう、愛された人間と愛されない人間。



それが、由理ちゃんと美実。



みんなから愛されて何もかもが完璧だった由理ちゃん。



いつも比較され愛想が悪く乱暴な美実。



その違いは一目瞭然だった。