「そっか、そうだよな…」



「お母さんの実家のこと知りたい」と聞いて私は戸惑いながら頷くと、お父さんは間を開けては哀しそうに頷かれた。



「………」



やはり私は知ってほしくないのだろう。



でも私は……。



「分かった、ちょっと待ってて」



「うん」



そう言ってお父さんは3階へと上がり、しばらくして戻ってきた。



「ん」



戻ってきてお父さんはある1枚の少し大きめのメモ用紙を渡してきて、そこには住所と地図が書かれていた。



「これは?」



メモの中に゛天仲 ここあ゛という名前が書かれていたが、私にとっては初めて聞く名前だった。



「天仲 ここあ〈あまなか ここあ〉さんって誰?」



お父さんに訪ねると、お父さんは静かな口調で答えた。



「由理香の血が繋がっている仲で唯一許せる人だよ」



「えっ」



(それってでも…)



お母さんの他に美実さんの家族など…。



(もしかして)



そう言えば、お母さんが以前に唯一教えてくれた事があった。



それがこの人なのだろう。



「従姉妹の人?」



そう言うと、お父さんは少し微笑み柔らかな声で頷いた。



「そう、お母さんの従姉妹なんだよ」



お母さんと美実さんの従姉妹。



この人はお母さんの家のこと知っているって事なんだ。



どんな人なんだろう?



「それで」



「ん?」



そのままお父さんは言葉を続けるように言う。



「実は明日その人に会うことになっているんだけど、実は用事が入っていけなくなってしまって」



「!」



「よかったら、会いに行く?」



「!?」



(それって…それって)



「お母さんのこと聞けるの?」



「うん」



本当はずっと知りたかった。



どうしてお母さんが殺されなきゃならなかったのか。



どうして姉妹同士で憎しみ合わなければなかったのに。



お母さんは美実さんのこと憎んでいなかったのに。



いつも隠されているみたいで、それが少し悲しかったんだ。



でも、お母さんは家のこと聞くと哀しい顔するから、だからずっと聞けなかった。



聞けなかったんだ。



でも、それでも良かった。



何も影響も起きていなくて何も知らなかったから、気にする気持ちも持っていなかったから、本当にそれでよかったんだ。



でも、今は……。



すべてがひっくり返ったように変わってしまったから、この前までの知らないままの私で居るわけにいかないんだ。



だから、知るべきなんだ。