「なんで…こんな、どうしてなの?」



私は手を震えさせながら、お母さんの手を握る。



握る私の手に微かな力を感じた。



「お母さん」



私はぼそっと呼んだ。



すると、お母さんが小さな声で途切れ途切れに言葉を紡ぐ。



「何もしなくていいよ…。その、かわりに…私の…話し、を聞いて…」



「えっ」



私はお母さんの顔をじっと見つめた。



そして、お母さんはゆっくりと口を開き始めた。



「あの人を…恨まないで」



(あの人?)



あの人ってもしかして…。



「美実は…しては、ならない、事を…また、してしまった。だけど…恨まないで」



「お母さん…」



私は今の言葉で分ってしまった。



誰がお母さんを刺したのかを。



(美実さん)



「美実は…誰にも、愛され…なかった。そんな美実を、私はいつも嫌悪感を…抱いて、いた。私は…美実と…違って、愛されて…いた。だから、恨まれても…当たり、前なの」



お母さんはグッと苦しむように顔をしかめる。



「これは…私が、今まで…美実にして、きた…罰が、当たったの」



お母さんは苦しそうだけど、淡々と話す。



それだけでも、私はすごく辛かった。



「だから…お願い、あの人を…恨まないで」



「お母さん…」



「お願い…」



表情はとても辛そうで声はひどく掠れていたけど、言葉は確かに思い張った言葉だった。



「わかったよ」



私がおもむろに告げると、お母さんは安心するようなほろこびを浮かべる。



でも、だからあの人はお母さんを刺したの?



恨んでいたからずっと?



(そんなのって…)