「とにかく、先生に言おう」



「う、うん」



2人の動きが止まった後に彼の言った言葉に私はまっすぐに頷いた。



階段の方へと踵を返そうした、その時だった。



「ふざけんじゃないわよーー!!」



お腹を押さえて座り込んでいた白石さんが、美実さんが落とし転がっていたナイフを握り締め私に振り掛かろうとしていた。



「っ!?」



「美沙樹!…えっ」



私は思わず目をつぶってしまい、同時にビッと切られる音がした。



一瞬、誰かの駆け足も聞こえた気もした。



だけど、全く切られた感じも痛みも感じない。



さっきの当たった手の所しか痛みが感じない。



「っ!?」



葉月くんの驚く声が聞こえ、疑問に感じた私は恐る恐る瞳を開けると、私を庇うように誰かが前に立っていた。



「お、お母さん!?」



なんで、お母さんが学校にいるの?



どうして……?




いつだってお母さんは私を助けてくれた。



自分を犠牲にする事など厭わないくらいに、いつも私の安全を優先をしてくれた。



そういつだって、私の事を守って助けてくれてたんだ。



「どうして……」



思いもしない人物に私は目を開いた。



そして、ゆっくりとお母さんの体がこちらに向き、少し低めの声でささやく。



「よかった」



「えっ」



「響が無事で居てくれて、本当によかった」



「お母さん?」



そこでお母さんの言葉が切れ、歯切れが切れるようにゆっくりと倒れ込んだ。



「お母さん!!お母さん!」



倒れ込んでしまったお母さんに、何度も呼び掛けるが返事がない。



前に立っている白石さんの表情を不意に見ると、目が泳いでいて動揺していた。



なんでこうなってしまったの?



何がいけなかったんだろう?



何が……。