どんな時もお母さんは助けてくれていた。



風邪を引いた時、怪我をした時、友達とケンカをしてしまった時、大事な物をなくした時、どんな時だって一番に助けてくれていた。



また、私が言う事聞かなかった時、悪さをした時、お母さんの大事な物なくした時、物を壊してしまった時、門限を破ってしまった時、嘘を付いてしまった時、それでもちゃんと謝ると優しく諭し許してくれた。



私がどんな些細な事でも、どんな時でも、上手く出来たら自分の事のように褒め称えてくれた。



お母さんはとても厳しい規則を私に与えて、とても甘やかすように優しくしてくれていた。



いっけんすればお母さんの愛情は少しだけ異常で激愛している感じだとお父さんはよく言っている。



危険な事や危ない事には出来るだけ避けて、まるでお人形のように大事に育てられていた。



お母さんはいつも何かに恐れていて、私はその恐怖の何かから守るようにしていた。



きっとそれは、この人からだったかもしれない。



あの時も助けてくれて、だから、いつも助けてくれていたんだ。



「このぉ!!」



美実さんはの憎しみはお母さんに向けたものだろうけど、お母さんの代わりに今は私に向けられている。



白石さんがこの人に仕向けたのだろう。



葉月くんと仲良くする私に憎しみを向けた行為なのだろう。



美実さんのナイフが私にもう一度むけられたその瞬間、美実さんの手からナイフがカランと落ちた。



「何をするのよ!」



「葉月くん……」



「美沙樹、大丈夫?」



「う、うん」



どんな時でもいつでもお母さんは助けてくれていた。



だけど、今回私を助けてくれたのは葉月くんだった。




美実さんの腕には葉月くんの手が掴まれていた。



その瞬間にナイフが落ちた。



後ろを見ると、白石さんがお腹を抑えて床に座り込んでいた。



「白石さん?」



「大丈夫、峰打ちだから」



「そっか」



「ありがとう」



「うん、よかった」



「………」



私はなんとか無事でいられた。



葉月くんのおかげだ。



初めての事だった。



「くそっ」



葉月くんが美実さんの腕を離した瞬間に美実さんはとても悔しがるような様子でその場にうなだれ始めた。