この人に対してほんの少しだけ怖い部分もあったけど、そんな事を思ってる暇などなかった。



あたしは意を決意する。



「心宮美実さんですよね?」



「ああ?」



その人は不機嫌そうな顔で振り向くが、あたしはあえて笑顔を浮かべる。



案の定、感じ悪く怖い感じだった。



瞳もきつく今にも人を殺しに掛かりそうな勢いだ。



「こんな所で何しているんですか?」



「あんたに関係ないだろ」



苛つくように言い放ってくる。



当たり前な口調だ。



見ず知らずな人間に答える義務など持っているはずないよね。



だけど、あたしはある提案をその人に向けたのだった。



「行く所がないんですよね。家に来ませんか?」



「はあ?」



普通の人なら、この人を恐れて絶対にこんな事を言ったりしない。



「家の者には、あたしが説得するので」



「あんた何考えているの?私にそんな事を言うなんて」



「さあ、何ででしょうね」



そして、あたしは不適な笑みを向けたのだった。